7度目の"生誕祭"を迎える君へ
2月24日
2016年「まで」は自分にとって特別なイベントのない普通の日
2016年「から」は自分にとってとりわけ重大かつ大切になった日
JKギャルで社長でアイドル、桐生つかさの誕生日
これで何度目だろうか、彼女の誕生日を祝うのは
自分の誕生日以上に、彼女の誕生日を祝うのは
日付が変わった瞬間に彼女の誕生日を祝うファンアートをひたすらRTし
その枚数が毎年増えていることを噛みしめて
生誕祭タグがトレンド上位に入っているかを気にして
「今年こそは、今年の総選挙こそは」と淡い希望を抱く
そんな事を毎年毎年繰り返していた、2月24日
そして迎える彼女にとって7度目の”生誕祭”
ただし今年はいつもと違う点がある
なにせ今年が初めてだから
『声』が付いた彼女と迎える生誕祭は
新しいスタートラインに立った彼女と迎える2月24日は
残念ながら今年は日付が変わった瞬間に祝えないけれど
改めて
ハッピーバースデー、桐生つかさ
これからもより高い壁に
新しい世界に
そして自分自身の限界に挑み続ける君に
幸あらんことを
桐生つかさが仮面ライダーアークワンに変身する二次創作イラストが好きだって話
はじめに
皆さんボンジュレクチュール、zawa缶です。
まずはじめに、シンデレラガールズ9周年おめでとうございます。今年のアニバーサリーアイプロは桐生つかさが参加していたこともあって、自身にとってとても重要でとても充実したイベントとなりました。
ところで最近、桐生つかさがプロデュースアイドルとして登場した『9thアニバーサリー アイドルプロデュース』が終わってから、僕はとあるイラストを「やっぱりこれ名画だよなぁ……」と思いながら1日に数回は閲覧しているのです。
桐生つかさ×仮面ライダーアークワンって?
https://www.pixiv.net/artworks/83700645
↑こちらのイラストです。
桐生つかさが『仮面ライダーゼロワン』の作中に登場した『仮面ライダーアークワン』を模した衣装を身にまとった姿のイラストとなります。
作者はぼひゃまげ様()奥山沙織Pさんでシンデレラガールズ×仮面ライダーのイラストを数多く投稿なさっている方です。
仮面ライダーゼロワン #って何
上のイラストにおいて桐生つかさが変身している仮面ライダーアークワンとは、仮面ライダーシリーズの令和第1作『仮面ライダーゼロワン』の主人公、飛電或人(ひでんあると)/仮面ライダーゼロワンが終盤において変身した姿です。
『仮面ライダーゼロワン』の主人公、飛電或人は人工知能を搭載した人型ロボット『ヒューマギア』の生産・流通を取り仕切る大企業『飛電インテリジェンス』の社長兼仮面ライダーとして、ヒューマギアを怪人に変貌させるテロリスト集団やヒューマギア廃止を目論む他社の社長と戦う物語です。放送開始前から一部のJK『社長』アイドル桐生つかさとは社長繋がり(とダジャレ言う繋がり)でシナジーを感じていたとかいないとか。上記イラストの作者さんは社長繋がりで桐生つかさが仮面ライダーゼロワンに変身するイラストを、 ゼロワンの新フォームが登場する度に描いてくださりました。
とは言っても飛電或人と桐生つかさってそこまで共通点ないのですよね。自力で新しい会社を立ち上げたつかさに対して或人は祖父の遺言による世襲ですし、或人はヒューマギアに対して少し理想主義が過ぎるところがあったりと。だったら現実主義者な一面があったり初登場時からしばらくはクソコテなところがあったりしたもう一人の社長ライダー=天津咳(あまつがい)/仮面ライダーサウザーの方がまだシナジーあるというか……
仮面ライダーアークワン誕生の経緯
物語の終盤において、飛電或人は敵対していたテロ組織――『滅亡迅雷.net』のリーダー『滅』の攻撃によって大切な相棒である秘書ヒューマギア『イズ』を破壊されてしまいます。
大切な相棒を失って絶望の淵に立たされた或人の前に、イズと同じ顔・同じ容貌のヒューマギア『アズ』が姿を現します。
或人の大切な相棒が奪われたことで或人の心に『怒り』『憎しみ』『殺意』『復讐心』といった『悪意』の感情に支配されたことを感知したアズは彼に最狂最悪のライダーとなるベルトとアイテムを渡し、或人はそれを受容れて仮面ライダーアークワンに変身。イズを破壊した滅への復讐へと身を投じていきます。
仮面ライダーアークワンの詳細についてはこちらをご覧ください。↓
仮面ライダーアークワン (かめんらいだーあーくわん)とは【ピクシブ百科事典】 (pixiv.net)
桐生つかさと「かけがえない相棒」
直近のイベント『9thアニバーサリー アイドルプロダクション』のコミュでは、桐生つかさとプロデューサーの関係が強い絆で結ばれたものとなった事を示す場面が数多く登場しました。
正直に言って、つかさがプロデューサに抱いている感情って(恋愛感情とはまた別ベクトルな気がしますが)もはや好意が1000%カンストしていますよね。合わなかったり結果を出せなければいつでも切れる『ビジネスパートナー』から始まった筈の関係が、もはや切れるなんて考えられないという程の「かけがえない相棒」と言えるほどでしょう。
だからこそ考えてしまうのです。
「もしも桐生つかさが理不尽な形でプロデューサーとの関係を失うことになったら。例えばプロデューサーが事故にあって帰らぬ人となったら」と。
アークワンと桐生つかさに対する劣情
その上で先述した「桐生つかさアークワン」のイラストをもう一度見てみます。
- 希望の光が失われ虚空を見つめているかのような、絶望で錆色の赤に染まった血の涙を流す右の瞳
- 大切者を奪った対象を絶対に許さない・逃さないといわんばかりにギラギラと不気味に光り輝く左の瞳
- 色鮮やかだった未来が二度とこないことを暗示しているかのような、白黒で薄暗いボディと全体色
- 大切な者を奪った対象を刈り取ってやろうという態勢の右腕
- エネルギー溢れてシャキッとしている普段のつかさは取らないであろうだらりと覇気のない姿勢
- etc
………うん、名画だね。
おわりに
まあつまり言いたいことは
ああああああああああ大切な相棒を失って茫然自失になった後、復讐の炎に囚われて無慈悲で冷徹な粛清を行う桐生つかさみたいよぉおおおおおおおお公式は絶対無理でも二次創作でみてみたいよおおおおおおおおおおおおおおおおおお
です。以上。
でもやっぱり桐生つかさは仮面ライダーディケイドだと思うんだ。
ところで仮面ライダーディケイドには激情態ってフォームがあって……
「桐生つかさ」という商品――カリスマJK社長がアイドルをする理由
はじめに
「そういえば、桐生つかさの目指すアイドル像ってなんなの?」
上記の質問は、いつかの総選挙期間中に偶然みつけたツイートの文章を記憶から掘り起こしてみたものです。
当時の自分はこの問いに対して自分なりの答えを出すことが出来ませんでした。
それから時が経ち、ボイスオーディション3位により桐生つかさにCVが付いた現在、今なら答えをですことが出来ると思いこのブログへの着手を始めました。
「はじまり」は凄くビジネスライクだったと思う
こちら皆様おなじみの「メモリアルコミュ1」と「初期Rあいさつセリフ」です。
このテキスト見てもわかる通り、この時点では桐生つかさがアイドルすることを決めた理由って「アイドルというビジネスを新たに開拓することで自分が行うビジネスブランドの価値を高める足しになるから」という凄くさっぱりした理由なのですよね。アイドルになるに当たって滅茶苦茶に重い理由やエモい理由、一般的に共感できそうな理由なんてまるで背負っていない。
それでも、桐生つかさはこの時点で言っております。「やるからには『トップ』目指すんで、OK ?」と。ビジネスの延長といえど妥協はしない・やるからには頂点の領域を目指す、というのは経営者桐生つかさの拘りではありますが、ここに「『トップ』を目指す・実現するということが『桐生つかさ』という商品が内在しているバリューではないか」と私は考えました。
「桐生つかさ」は商品だから
社長+広告塔だった頃の桐生つかさ
つかさが経営する会社ですが、主な事業は
- ブランドプロデュース
- アパレル
- バイラルメディア
であることが判明しておりますが、このうちアパレル事業に関してはつかさ本人が自社モデルを務めていることが判明しております。
顔が良いのは桐生つかさ本人が自覚して武器にしているものでもあります。しかし桐生つかさ、本当に顔がいいな。美少女コンテンツは顔が良いことが当たり前として、その上でも物凄く普遍的でハイクオリティな『顔が良い』を実現させてないか。
自身のビジュアルが良いことを最初からウリにしていたのか、それとも途中から気づいたのか、現状だとそこを確定する情報はありません。
しかし『桐生つかさ』自身が会社における最大の広告塔であることは間違いないでしょう。
アイドルは商品
「ランウェイのカリスマ」の台詞において、桐生つかさはアイドルとなった自分自身が『商品』であることを述べています。
あくまで商品は服やアクセサリーなどであり自分自身はそれらの良さを伝える手助けをするための『広告塔』であったJK社長時代から、自分自身が直接『商品』となるJK社長アイドルへの移り変わりです。
それでは、『アイドル』桐生つかさとして顧客に提供することが出来る価値とは一体何なのでしょうか?
「桐生つかさ」というブランド
桐生つかさはアイドルとなる前から社長かつ『広告塔』としてメディアにも積極的に顔出しを行っており、カリスマ社長としてのイメージを創り上げてきました。
その『カリスマJK社長』を引き継いだ状態でアイドルとなった桐生つかさ。目指すアイドル像も今までの『桐生つかさ』の延長線上に置いておく方が従来の顧客層を逃さず新たな客賞を獲得する上での最善の選択となるでしょう。
アイドルとなる上で「今まで通りではない新たな自分を獲得すること(後述のメモリアルコミュ3参照)」は大事ですが、今まで築き上げてきた自分自身のイメージを崩すことはメリットよりもリスクの方が大きくなることが予想されます。
そして強気で常に上を目指して進していく・大きな目標を掲げて有言実行するカリスマJKというイメージをアイドルとしての自分にも適用していく必要があります。
常に上を目指す、そして有言実行する桐生つかさが目指す先は当然『トップアイドル』です。
以上から、桐生つかさのアイドルとしての姿はJKギャル社長時代の延長でブランディングされたものであり、今の桐生つかさのアイドル像≒アイドルとして内包する価値は『常に前を・上を目指しビッグマウスを叩きながら有言実行を続ける、最強の美人ギャルJK社長アイドル桐生つかさ』ということを推察することが出来ます。
商品「桐生つかさ」の価値と重圧
職人「桐生つかさ」
以上二枚の写真が桐生つかさのメモリアルコミュ3になります。
写真撮影の当初は「経験あるしパパっと終わらせる」と宣言していた桐生つかさですが、アイドルの写真とするためには新たな写り方を見つかる必要があると指摘されると一転、満足できる一枚をみつけるために何枚も、何時間も費やしていきます。
このコミュ3は桐生つかさが『職人』と『経営者』の狭間に居る存在だということを説明していると私は考えております。
経営者としてもアイドルとしても自身が提供する商品に対するクオリティには非常にこだわるのが桐生つかさです。ここに『職人』としての彼女の一面を垣間見ることが出来ます。
そもそも自社の製品であるアクセサリー等を(全部というわけではないでしょうが)自身でデザインしている節もあり、デザイナーという『アーティスト』の側面も持っているのですよね、桐生つかさ。
「経営者」としてコストや利益、時間などには十分に考慮した上で、その中で『職人』『アーティスト』として最大限のクオリティにこだわるのが桐生つかさなのです。
「トップアイドル」というレッドオーシャン
桐生つかさがアイドルとなった時、シンデレラガールズというコンテンツには(765プロの13人やトレーナーさんを除く)180人以上ものネームドキャラクターとして登場しているすでに180人以上ものアイドルが存在しておりました。
スカウトされた時点で歌、ダンス、ビジュアル、オーラ等のどれか――または全てにおいておいて類まれなる才能や確かな実力を有していた子、アイドルとしての仕事やレッスンを積み重ねていく中で秘めたる才能を開花させていった子、そういった「化け物」が沢山いる世界に桐生つかさは遅れて参入しました。
あらゆる面において平均以上のスペックを持っている桐生つかさですが、才能や努力に裏打ちされた実力を持つアイドル達が群雄割拠するシンデレラガールズにおいては苦戦を強いられることになります。彼女がスカウト時に掲げた『トップに立つ』を実現するには先を行く人たちがあまりにも多いというのが現状です。
更に、シンデレラガール総選挙とデレステ内のストーリーが関連付けられるようになっており、総選挙の結果がデレステ世界において重要な影響を与えることが示唆されるようになりました。
『シンデレラガールズの世界』の外側――現実で行われる総選挙をはじめた人気争いは更に過酷で苛烈です。今回ボイスオーディションにて見事3位に輝くことが出来た桐生つかさですが総選挙本選においては初参加の第3回から1度も圏内入りしたことがありません。彼女がトップの称号である『シンデレラガール』を獲得するのは、はっきりいって目的地が途方もない先にある茨の道を突き進むことと同義になるでしょう。
このように、シンデレラガールズの世界においてトップアイドルを目指すことはレッド―シャンであり、桐生つかさにとってある意味では不利な状況ともいえるのです。
カリスマJK社長――という『偶像』を纏う桐生つかさ
桐生つかさが他人に見せている「姿」は「偶像」です。会社のトップとして、会社の広告塔としてそしてアイドルとして、支持・信頼を得て提供する商品への購買意欲をそそるのに特化した偶像です。
その偶像である姿はプロデューサーの前では完全に解除している――とは口がさけてもいうことは出来ません。ビジネスパートナー以上の信頼を積み重ね、アニバーサリーアイプロにおいては「もしも(プロデューサーと)出会えない運営だったとしても自分から会いに行く」といってのけるほどの強い絆を紬いでおりますが、プロデューサーに接する時も「ギャルで美人でJKで社長でアイドルな桐生つかさ」という姿は絶対に崩しません。
そのアニバーサリーアイプロでも本人が言及しておりましたが、桐生つかさ、イケイケドンドンな言動とは裏腹に本質は「臆病で緊張しい」です(少なくとも蟹やペリカンにびびったりするくらいには)。一見するとネガティブな印象を与えやすい個性ですが、『桐生つかさ』という偶像を纏った桐生つかさが己を鼓舞し目標へと進むことで「迂闊なことはしない・何事にも注意深く冷静にメリットとデメリットを把握しておく」という武器に変えているのです。
根っこは臆病者で心配性な女の子が「自分のやりたい事を経営者という形で叶えるために」「自分を信じて賭けてくれた・ついてきてくれた人たちの人生や幸せを背負って前へ進むために」「苛烈なレッドオーシャン波打つアイドルの世界で『トップ』になるために」、そのために『桐生つかさという偶像』を纏った姿が今の『最強JK社長アイドル桐生つかさ』であると自分は考えております。
おわりに――購入・投資を考える皆様へ
桐生つかさを彼女が目標とする「トップアイドル」にする方法は2つあります。
一つはシンデレラガールズ公式が「桐生つかさがトップアイドルとなるストーリー」を何かしらの媒体で提供すること。
もう一つは毎年春季に開催される「シンデレラガール総選挙」において桐生つかさが1位を獲ることです。
前者に関しては率直に言って「無いと思え」です。
後者に関しては前述した通り茨の道です。前者と比較してまだ希望はあるというだけで実現する見込みは現状だと1%にも満たないでしょう。
しかしながら、私はその1%の可能性に賭けています。
何年かかるか分かりません。『シンデレラガールズ』というコンテンツのサービス終了が先に来るかもしれません。
それでも、私は『桐生つかさが』シンデレラガールズというコンテンツの名実ともに『トップ』となった姿を見たいという理由からこのコンテンツに手を出し、今でも思い続けております。自身の時間と財産の何割かを、彼女が『トップ』となるために費やしたいと考えております。
さて、この記事を読んで桐生つかさに興味を持った皆様(いるのか?)、彼女の未来に『投資』してみませんか?
参考までに、桐生つかさのカードやイベントでのセリフ等をまとめてあるサイト『桐生つかさwiki』へのリンクを貼っておきますね。
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ムーンロード(小説)
ムーンロード
満月の夜、男が海岸沿いを歩いていた。
静寂に包まれた海岸。
静かに波打つ黒い海は月の光に照らされ、月の真下は月光で出来た道が掛かっていた。
人々はこの現象を「ムーンロード」と呼んでいた。
そんな自然の神秘には目もくれず、男は海岸沿いの道をとぼとぼ歩いていた。
歩き続けて男は桟橋に到着した。桟橋には、長く白い髭を生やした老人が立っていた。
「……そこで何をしているのですか」
男は桟橋に足を着ける直前で立ち止まり、老人に話し掛けた。
「月光浴だよ。今日は満月が綺麗だろう?」
「そうですね」
老人の問い掛けに男はそっけなく答えた。
「お前さんこそ、こんな時間に一人で何をしているんだい?」
「……日課なんすよ。ここに来るのが」
面倒くさい爺さんに捕まった、とでも言いたげな表情を浮かべながら男は答えた。
「そうかいそうかい。まあしかし、夜に男一人とは珍しいな」
男の素っ気ない素振りを気にすることなく老人は質問を続けた。
「別にいいでしょ」
「彼女とかおらんのか?」
男は老人から見えないよう右手を背後に隠し、ぐっと握りしめた。
「……なんでそれを訊くんですか?」
「お・ら・ん・の・か?」
「……いたよ、いましたよ。去年までですけれど」
「ほうほう。その子はどんな女性だったんだい?」
老人は興味深そうに尋ねた。
男は一瞬、わざと唇を嚙んだ。
「……素敵な女性だったんですよ。すらっとしてて、長い黒髪が似合う顔つきで」
「わりと警戒心が強くて。ナンパしてきたり飲み会で狙ってくる男には無茶苦茶な事を言い放って追い払ったりしていたっけ。でも、誠実な対応にはとことん応えてくれたんです」
「……嬉しかった、勇気出して告白して、それを受け入れてくれた時は。生きていて一番『俺は幸せだ』って思えた瞬間で」
「……どうして、自殺なんかしちまったんだろう」
先程まで嬉々と彼女のことを語っていた男の表情が一瞬で曇った。
苦々しく唇をを噛み締める男の表情を月光が明るく照らす。
「家族のことは殆んど話してくれなくて、個人のナイーブなところには触れない方が良いと思ってたんです、当時は。でも、命を絶つほど思い詰めていることがあったなんて……。悔しいですよ、情けないですよ。辛いことや悩んでいることを話せるほど信頼はされていなかったんだって」
男は目を隠すように手を顔に被せた。しばらくして手を離した時、男は力むように目を見開いているようにみえた。
「そう泣くな。こんな優しい男に愛されたんだ。彼女はきっとあの世で幸せに暮らしているよ」
老人は男の肩に右手をぽんと置き、左記ほどまでよりも優しい声で諭すように宥めた。
「いえ、あいつは天国に行けません」
男は反論した。彼の右手は再び強く握られていた。
「自殺した人が天国になんか行けるわけないでしょう。どんなに心がキレイだって、それを俺が主張したって、地獄の底に落ちていくしか無いんですよ」
「まぁ自殺は重い罪さね。けどよ、地獄が千の底にあるとは限らんだろう」
「は?」
老人は天を仰ぎ見て満月を指さした。
「ここから観た月は美しく幻想的だ。現地もそういう場所なんだろう、ってこの地に縛られた人々はずっと信じていた」
「だが科学技術ってやつが本当の姿を暴いちまった。砂と岩だけの凸凹した不毛の土地、陽が当たれば灼熱で当たらなければ極寒、それはまるで――」
「地獄」
男はぼそり、と呟いた。
「そうさ。天国と地獄なんてのは上と下で離れているものじゃあない。表と裏の紙一重か、もしくはゴチャゴチャに混じって混沌としているのかもな」
「……」
老人の話を男は黙って聞いていた。
海にかかった月の道が先ほどよりも明るく、まるで実体を持っているかのように輝きはじめた。
「進むのか? お前も」
老人は男に問いかけた。手にはいつの間にか船を漕ぐ舵を持っていた。
「……ええ。覚悟は決まりましたから」
男は頷き、海の方をみた。
桟橋には、今まで見当たらなかった黄色に輝く小舟が停まっていた。
「そうか、なら早く乗り込むんだな。船が表れるている時間は思っているよりも短いぞ」
老人に促されるがまま男は船に乗り込んだ。
老人も乗り込み、舵の先端を海中に浸けて押し出すように前後に振った。
二人を乗せた小舟はゆっくりと前進し、沖へと進んでいく。
月の光で出来た明るい道の真ん中を、進んでいく。
1時間も経つと小舟は港から遠く離れ、豆粒のように小さく見える程度になっていた。
満月が雲に隠れてムーンロードは消え、船の姿は見えなくなった。
満月が顔を出すと月光の道は再び現れ――しかし船は、二人を乗せた小舟は姿を消していた。
あとがき
先日ちょっと伊豆の方に行く用がありまして。宿で見たムーンロード(月の光が夜の海面に映って道が掛かっているように見える現象)に触発されて書いた文がこちらになります。
このブログでは時々こんな風に掌編の小説をUPすることが時々ですがあると思います。
よろしくお願いします。 <(_ _)>